A Note of Yasunaya Polyana

ヤースナヤポリーニャの手記 2011

亭主利休が茶会に招いたのはロシアの文豪トルストイ。自然を愛する彼の優しいまなざしが緩やかな波調にのせて茶事は進行する。徳富蘆花は自己の解放、信仰の助言に飢え、仕事に手が就かない日々を送っていた。ベストセラーとなった不如帰(大正年)絶頂期の傍ら、日露戦争の末、ロシア帝国に勝利を収めた日本帝国の趣を他所に、非暴力主義者のトルストイを崇拝していた。そんな解放された日本を後に、盧花はトルストイとの面会を果たす旅へ出たのです(実話)。3ヶ月の航海の末辿り着いた先は、このお茶会であった。厳かな茶室に突如侵入した盧花は、遂にトルストイに出会ったのであった。緊張感漂う茶室で、差し出されたお菓子をほおばりながらも、トルストイにしつこく尋問する。マイペースなトルストイをよそに、亭主も集中力を切らすが、一服のお茶により、一同平静になる。その後も思わぬ客の到来により窮屈になった茶室。

趣旨

 時代背景が違う者同士が一部屋に集まり、お茶をする。茶道という道理に合わせながら、他人を思い、出会いを楽しむ。そこに訪れる震災。黒子が彼らを試すかのように、茶室を大きく揺らす。漸く揺れは収まるが水銀のような液体が広がった。映った姿は湾曲し、青白く光る波を眺めて幕は閉じる。テロップが流れると、彼らの復活のポーズが始まる。 黒子共手を引かれて 一同退場する。劇(お芝居)に落とす事によって、 観客は自分たちが目にしたスペクタクル(この映像作品)と既に知っているリアリティーと結びつける能力を持っている(この度の震災)。舞台の裏と表を明かすことでスペクタクル化され、観客はどこか救済され、リアリティーを受け止めるための想像力や柔軟性に期待した。本来の喜劇(コメディー)はその様な効能を担っているのでは。

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